シンガポールを拠点に活動するアーティスト、Gonemuneは、2020年より本格的にキャリアを開始した。自身の内的世界を掘り下げるように、ダークウェーブ、シンセポップ、エクスペリメンタルな音楽を手がけている。
彼女の音楽は、古びたシンセサイザーの温度感と、未来的な冷たさが交錯するサウンドスケープによって特徴づけられる。主なテーマは孤独、再生、喪失であり、それらを単なる哀愁ではなく、自己変容の物語へと昇華している。
デビュー作『TULPA』は2022年に発表された。自己を模索する存在=トゥルパを題材に、音と声による密やかな自画像を描き出したこの作品によって、東南アジアのアンダーグラウンド・シーンに確かな足跡を残した。
『TULPA:REDUX』では、アメリカ・アリゾナ州出身のポストロック・アーティスト、Foster Hildingを迎え、異なる背景を持つ表現者同士の対話が試みられた。このコラボレーションは、Gonemuneの内省的な世界観に、新たな層を与えるものとなった。特に、ヘヴィーなギターシューゲイザー、グランジ的史観の強さが特徴的だ。
2025年には、新たなオルターエゴ「Averdonia」を据えたシングル『AMNESIA』を発表し、自己と記憶をめぐる探求を深化させた。
Gonemuneは楽曲制作のみならず、ミキシング、映像制作、舞台演出までも自ら手がけるマルチディシプリナリー・アーティストである。特に、舞踏(Butoh)の要素を取り入れたライブパフォーマンスは、観る者を音と身体の深層へと誘う。
彼女にとって、音楽とは単なる表現手段ではない。それは、生き延びるための儀式であり、記憶を編み直すための航海である。Gonemuneの楽曲群は、聴く者に静かな問いを投げかける──「あなたの中に残るものは何か」と。
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